あれから | 35歳年上の夫は師匠でエイリアン! 

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【夫】台湾人 × 【妻】日本人

国際結婚? いえ、惑際結婚ですから!

気がつけば2男1女。

あの男を見ていると、とても同じ人類だとは思えない。
漢方薬を水なしで飲めるなんて
一体どんな味覚をしてるんだ、あのおっさんは。

早いもので、

ひと月を越えた。

 

 

 

元日。

 

地元の石川県、

富山県や新潟県を

大いに揺らした地震は、

 

いたるところで

生々しい爪跡を残したまま、

でんと居座っている。

 

 

 

 

近所の道を

左に曲がると。

 

擁壁が丸ごと崩れ落ち、

その上に立つ空き家の窓が

サッシごとなくなっている。

 

 

おまけに。

 

壁を作っていた

分厚いコンクリートが

道幅をすべて塞いでしまい、

道路の先がまったく見えない。

 

 

その反対側、数メートル先の

道路には大きな穴が開き、

 

応急的に塞がれてはいるものの、

水が噴き出したままだ。

 

 

 

 

あちこちの家で

塀が倒れているのも。

 

屋根の上や壁に

ブルーシートが

かけられているのも。

 

家の外に被災した家具が

持ち出されているのも。

 

屋根が道路に触れるほど

ぺしゃんこになったお宅も。

 

 

どれもこれも珍しくはない

光景になってしまった。

 

 

 

 

無数のマンホールが、

盛り上がっているか、

反対に埋もれている。

 

 

ガードレールごと

陥没してしまった

歩道や路肩。

 

大きな亀裂が波を打ち、

階段様の段差を

生み出した道や駐車場。

 

 

その上を通る時には

くれぐれも用心しないと、

車のタイヤがパンクしてしまう。

 

 

 

 

水漏れしているお店。

 

天井や壁が

剝がれているお店。

 

店員さんがヘルメットを

被ってレジをしているお店。

 

 

床が斜めに

傾いているのだろう。

 

歩いていると

平衡感覚がおかしくなり、

頭がくらくらしてしまうお店。

 

 

 

 

 

 

私が暮らす地域では、

断水も続いている。

 

 

 

 

 

 

「 “営業中 お湯出ます” やって!」

 

 

 

 

 

 

先日。

 

学校へ迎えに行った

帰りの車中。

 

次男が興奮気味に

言った。

 

 

 

 

 

 

なに!?

お湯が出る?

 

 

 

 

 

 

「ええ! ほんとに? 入ろうか!」

 

 

 

 

 

 

私は嬉しくなって、

ついこう返した。

 

 

 

 

 

 

「絶対に嫌」

 

 

 

 

 

 

次男は冷たく

言い放った。

 

 

 

 

 

無理もない。

 

そのお店は

ラブホだった。

 

 

 

 

制服を着ている高校生と

親が一緒に入れるような

建物ではない。

 

 

 

 

 

でも。

 

温かいお湯が

たまらなく恋しい

私の妄想は止まらない。

 

 

 

 

 

ああいうところの

お風呂は大きいはず。

 

バスタブも大きくて

立派に違いない。

 

そこにたっぷり

お湯を張って。

 

 

洗剤入れて。

柔軟剤入れて。

 

オキシクリーンも

入れようかな。

 

 

じゃぶじゃぶ

じゃぶじゃぶ。

 

足で踏み洗い。

 

 

 

 

 

おばあさんは

川へ洗濯に。

 

おばはんは

ラブホへ洗濯に。

 

 

 

 

 

洗濯した後、

もう一度お湯を張って

風呂三昧なんていいなあ...

 

へへへへへへへへ。

 

 

 

 

息子を家に送り届けた後、

ひとりで引き返してこようかと、

少しの間だが、本気で迷った。

 

 

 

でも。

 

お店の本来の趣旨とは

あまりにかけ離れているため、

泣く泣く断念した。

 

 

 

 

 

だってだって。

しょうがないじゃない。

 

水出ないんだもん。

出ないんだもーん。

 

どうしようもないのよ。

あんた、これが。

 

わははははははははははは。

 

 

 

もはや

被災ハイ。

 

 

 

 

 

お風呂は、車で

片道40分程。

 

お隣りの

富山県まで。

 

 

洗濯は、車で30分弱の

コインランドリーへ。

 

週末は朝から

混雑しているから、

平日の朝早くに向かう。

 

 

 

家族全員分のお風呂代。

コインランドリー代。

ガソリン代。

 

 

決して馬鹿に

ならない金額だ。

 

 

 

生活用水も

汲みに行かなければ

手に入らない。

 

 

 

時間。

労力。

手間。

お金。

 

 

 

目下のところ、

毎日がサバイバル。

 

 

 

 

 

今ではもう

慣れてしまったのだが。

 

 

地震の後しばらくは、

あまり被害が見られない

場所へ遠出して、

自宅付近まで戻ってくると。

 

 

 

やっぱり。

 

あちこちで起こった被害は

夢や幻でもなければ。

 

蛇口をひねっても

水は出ないという現実をも

同時に突きつけられ。

 

否が応でも

思い出し。

 

帰宅する度に

陰鬱な気持ちになった。

 

 

 

 

でも。

いつか必ず。

 

今のどれもこれもが、

思い出になる日が来る。

 

みんなでお茶を飲みながら

話せる時が来る。

 

 

 

 

 

 

「いやー。あの時は、どれだけラブホで

洗濯したいと思ったか。ははははははは」

 

 

 

 

 

 

こんなふうに。

きっと。

 

 

 

 

 

だから。

負けてたまるか。

 

 

 

 

 

 

 

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